みなさんは「XR」という単語を聞いた事はあるでしょうか?まだまだ馴染みの薄い言葉かもしれません。

XRとは「Extended Reality(エクステンデッドリアリティ)」もしくは「Cross Reality(クロスリアリティ)」の略称で、「VR(仮想現実)」・「AR(拡張現実)」・「MR(複合現実)」などの仮想現実を構築する技術を総称する呼び名です。要するにXRを理解するには、まずVR・AR・MRについて知る必要があります。

今、この分野に様々な企業が力を入れ始めており、エンターテイメントの領域にとどまらず、ビジネスにおける作業効率化・生産性向上などの場面でも力を発揮しています。これは技術進化によりコストダウンの実現、小型化、そして何よりもスマートフォンの存在により普及が加速したのです。現在小売業界でもこの技術を取り入れる企業が増え、消費のあり方を変えるXRの技術に注目してみます!

 


 

最もユーザー数を伸ばしているXR技術 『VR(仮想現実)』

VRは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略で、「仮想現実」を意味します。

専用のVRゴーグルやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着することで視覚・聴覚に訴えつつ、CGなどで創られた仮想の世界を、さも現実で起こっているかのような没入感のある体験ができる技術です。ゲームやエンターテイメントの業界で実用化が進みましたが、昨今では教育や医療、VR空間上でのミーティングやオフィス見学など、ビジネスの世界でも広く活用されるようになりました。近年は機器も入手しやすくなり、最もユーザー数を伸ばしているXR技術です。

特徴としてはあくまで「非現実」である点。VRの世界は主にCGを中心とした映像技術で構築されています。あくまでも「仮想・人工の世界」を作り出す技術であり、現実へは干渉しません。

 

 

様々なVR体験が満喫できる施設 「V-World AREA」引用:V-World AREA クレディ・アグリコル|BOSS E•ZO Fukuoka https://e-zofukuoka.com/v-world/

「V-World AREA(ブイ ワールド エリア)」は、2020年の7月にPayPayドームの隣にオープンした、福岡ソフトバンクホークスが手掛ける”エキサイティングに五感を刺激する”複合エンターテイメント施設「E-ZO FUKUOKA BOSS(イーゾ福岡ボス)」内にあるVR体験エリアです。

火星の大地を駆け抜けるリアルな臨場感を味わえる『PHOTON BIKE(フォトンバイク)』や、本格的なバイク型マシンにまたがり。レーサー気分を満喫できるドライビングシミュレーション『PHOTON CAR(フォトンカー)』、高層ビルの間を自転車で疾走する『TIME CYCLE(タイムサイクル)』などVRゴーグルをつけて乗り物に乗るコンテンツや、大画面をタッチして遊ぶコンテンツなど全18種類のバーチャルコンテンツを楽しむことができ、まさにゲームの世界に入り込んだような空間。VRというコンテンツだけで1つのレジャー施設が出来るなんて、注目度と需要の高さが伺えます。

 

 

恐怖体験!?東京タワーから真っ逆さま 「東京タワーバンジーVR」引用:東京タワー(TokyoTower)|「驚きの新アトラクション『東京タワーバンジーVR』がメインデッキに登場!」  https://www.tokyotower.co.jp/event/attraction-event/tokyotower-bungeeVR/

東京タワーからバンジージャンプ!……実際はそんな事できないとわかりつつも、想像するだけで身の毛がよだつ感覚になりますよね。しかし、そんな「リアルではあり得ない体験」がVRならできちゃうんです!

3D都市データ『REAL 3DMAP』を保有する株式会社キャドセンターがVR開発した『どこでもバンジーVR』と株式会社ロジリシティが仕組みを考案した、脳の錯覚を加速させる仮想体験装置を組み合わせた『東京タワーバンジーVR』。VRで精巧に再現した東京タワーの高さ150メートルに位置する展望台から、地上に向かって真っ逆さまにジャンプ……するとスタッフが仮想体験装置を手動で動かします。え?手動なの?とも感じるのですが、リアルの身体も真っ逆さまになることで、よりバンジージャンプの没入感がアップするのです。デジタルとアナログを組み合わせる事で体験価値も向上する事例です。

 

 

社内コミュニケーションもVRを活用!VR会議 「Spatial」

引用:Spatial Systems, Inc.「Video VR会議Spatial」 https://spatial.io/

Contents
最もユーザー数を伸ばしているXR技術 『VR(仮想現実)』様々なVR体験が満喫できる施設 「V-World AREA」引用:V-World AREA クレディ・アグリコル|BOSS E•ZO Fukuoka https://e-zofukuoka.com/v-world/恐怖体験!?東京タワーから真っ逆さま 「東京タワーバンジーVR」引用:東京タワー(TokyoTower)|「驚きの新アトラクション『東京タワーバンジーVR』がメインデッキに登場!」  https://www.tokyotower.co.jp/event/attraction-event/tokyotower-bungeeVR/社内コミュニケーションもVRを活用!VR会議 「Spatial」最も身近なXR技術 『AR(拡張現実)』AR技術がECでの購入ハードルを下げる 「ZOZOCOSME」引用:ZOZOCOSMEで ARメイクはじまりました – ZOZOTOWN https://zozo.jp/armakeup/リアル店舗で期間限定ARファッションショー 「ZARA」引用:FASHIONSNAP.com 「ザラ」期間限定のAR体験提供、画面に映し出されたモデルが動き出す 2018年04月12日 12:54 JST https://www.fashionsnap.com/article/2018-04-12/zara-ar/ARでより強く打ち出せる世界観 「HIPANDA」引用:HIPANDA「WHAT’S HIPANDA」  https://hipanda.jp/whats-hipanda/“試し置き”ARで売り上げアップ 「RoomCo AR」引用:RoomCo AR – インテリアを試着する https://apps.livingstyle.jp/roomco/launchApp.htmlXR技術で働く人々をアシスト 『MR(複合現実)』設計、施工から検査まで…XR技術の活用で工数短縮 「EQ House」引用:EQ House|竹中工務店 https://www.takenaka.co.jp/eq_house/進化し続けるXRの世界

リモートワークが多くなり、オンライン会議が増えてきた昨今、実際に対面での空気感を感じられず、仕事がしづらいと感じる人も多数いると思います。そこで昨今、バーチャル空間にオフィスを再現し、アバターを通してオフィスにいるかようにコミュニケーションできる「VRオフィス」ツールが登場。社内コミュニケーションにVRを導入する事例が徐々に増えています。

VR/ARテクノロジーを活用したオンラインコミュニケーティングシステムを開発するアメリカのスタートアップ企業「Spatial Systems, Inc.」は、VRを使って臨場感・没入感を感じられるような新しい会議の形「VR会議」のシステム「Spatial(スペーシアル)」を開発。2Dの顔写真を元に3D変換したアバターを作成するだけでなく、手の動きや視線の方向などを感知するトラッキング機能によって、アバターと連携するAIが搭載されており、コントローラを操作する必要もありません。まるで目の前にいるかのような感覚で同僚のアバターとコミュニケーションを取る事ができるのです。

引用:PR TIMES「ヌーラボ、全社員にVRデバイス「Oculus Quest 2」の支給を決定」2021年3月25日 14時02分 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000246.000025423.html

 

この「Spatial」を導入しているのが、福岡県福岡市の企業「株式会社ヌーラボ」。直接顔を合わす機会が減少したことにより、どうしても雑談の機会やアイディア発散の場が少なくなったという課題から、全社員100名以上に一体型VRデバイス「Oculus Quest 2(オキュラス クエスト 2)」を支給し、アバターを用いた雑談やVRアプリ、さらにはランチを食べながらの雑談などを社員同士が一緒に楽しむことで、社内コミュニケーションが活性化しているようです。

ゴーグルをかけてVRでミーティング……なんてまだ奇妙な光景かもしれませんが、オフィスを計画的に縮小している企業の話題なども増えてきた今、未来のオフィスを先取りした投資ともいえるかもしれません。

 

 

最も身近なXR技術 『AR(拡張現実)』

ARは「Augmented Reality(アグメンティッドリアリティ)」の略で、「拡張現実」を意味します。

スマートフォンやタブレットなどのカメラ越しに見る現実世界に、本来なら実現していないCGなど仮想世界のコンテンツを重ね、拡張された現実世界を体験できる技術です。「TikTok(ティックトック)」のエフェクトや「ポケモンGO」などを想像いただけるとわかりやすいかもしれません。私たちにとって最も身近なXR技術だと言えるでしょう。SNSとの相性も非常に良く、現在の小売業界にはもはや無くてはならない存在にまでなっています。

特徴としては「現実世界がベースである」という点。VRが「非現実を現実のように見せる」ことを目的とするの対し、ARは「現実の中に非現実を追加する」ことを目的としており、私たちが生きる現実をより豊かに表現します。

 

 

AR技術がECでの購入ハードルを下げる 「ZOZOCOSME」引用:ZOZOCOSMEで ARメイクはじまりました – ZOZOTOWN https://zozo.jp/armakeup/

ファッション業界では早い段階からARが活用されていました。現在では試着をせずに着用した姿や色を確認できる技術が注目を集めており、特にコロナ禍の影響によりEC市場での活躍も大きく、より精度の高いアプリケーションが開発され進化し続けています。

ファッション通販サイト 「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」では今月、AR技術を使ってスマートフォンの画面でアイシャドウやリップを試せる「ARメイク」の提供を始めました。アプリの商品ページにあるボタンからARメイクを起動し、インカメラで撮影した自分の顔がメイク後のイメージに変わる仕組み。「ZOZOCOSME(ゾゾコスメ)」で扱う21ブランド、677種類のアイシャドウとリップに対応しており、「まるで鏡を見ながら商品を試すような感覚」をARで体験できるのです。

まさに化粧品は「試さないとわからない」商品。今まで使ったことのない商品をECで購入するのは抵抗があったと思います。そのハードルが少しでも下がり購買に繋がりやすくなった点は、採寸用スーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」や足のサイズを測る「ZOZOMAT(ゾゾマット)」、肌の色を診断してマッチしたコスメをレコメンドする「ZOZOGLASS(ゾゾグラス)」など、EC向け計測技術の提供に力を入れているZOZOならではのサービスです。

 

 

リアル店舗で期間限定ARファッションショー 「ZARA」引用:FASHIONSNAP.com 「ザラ」期間限定のAR体験提供、画面に映し出されたモデルが動き出す 2018年04月12日 12:54 JST https://www.fashionsnap.com/article/2018-04-12/zara-ar/

EC市場の拡大により衣料品小売業は、顧客をリアル店舗へ呼び込むため「商品を探して・見て・購入する場所」という位置付けから、「エンタメ化・体験型ショールーム」という考え方へシフトしつつあります。商品購入を目的とするだけではなく、ブランドメッセージやリアルでしかできない「体験」を通じてファンを増やすための特別なコンテンツへの投資を重要視しています。

大手ファッション小売業 Inditex(インディテックス)が展開するファッションブランド「ZARA(ザラ)」では4年前、スマートフォンやタブレットで「ZARA AR」アプリ(※1)をダウンロードし、対象店舗のウィンドウディスプレイなどにカメラをかざすと、ARでランウェイを歩くモデルが出現するという体験を提供していました。そのままECへ誘導し、モデルが着用する商品を購入できる仕組みで、今となっては当たり前になってきましたが、未だOMO(Online Merges with Offline/オンラインとオフラインの融合)が主流ではなかった時代から”店頭からECヘの送客”を実施していた驚きのオムニチャネル施策です。

(※1) 公式ARアプリの公開期間は終了しています。

 

 

ARでより強く打ち出せる世界観 「HIPANDA」引用:HIPANDA「WHAT’S HIPANDA」  https://hipanda.jp/whats-hipanda/

2019年4月に日本上陸した中国のストリート系ファッションブランド『HIPANDA(ハイパンダ)』。表参道の旗艦店「HIPANDA OMOTESANDO FLAGSHIP SHOP」では、店内外のいたるところにARギミックが散りばめられており、店舗のコンセプトである「お化け屋敷」「パンダ屋敷」が楽しく体感できます。

リアル店舗にAR技術をプラスすることでエンターテイメント性を持たせられ、よりブランドの世界観を強く打ち出す事ができます。また、店内を隅々まで見てもらうことができるため、滞在時間の増加や顧客の満足度向上につながるのではないでしょうか。

 

 

“試し置き”ARで売り上げアップ 「RoomCo AR」引用:RoomCo AR – インテリアを試着する https://apps.livingstyle.jp/roomco/launchApp.html

ECにおけるARの活用が広がりつつある中、特に家具や家電などの大型商品を扱うショップにとってのAR導入は大きなメリットをもたらします。ARを活用すると、家具や家電を実物大で自分の家や部屋に表示させることができ、「このサイズは部屋入るの?」「今のインテリアの雰囲気にマッチしてる?」など、最大の弱点であった「実際に商品を配置することができない」という課題が解決できるのです。

株式会社リビングスタイルが提供するアプリ「RoomCo AR (ルムコエーアール)」では20以上のブランドから販売されているインテリア商品などの実物大3Dデータを収録。サイズや色を確認しながら、試着感覚でインテリア選びができます。実寸大でAR表示されるため、アイテムの大きさや部屋とのマッチ感が一目瞭然。気に入った商品はそのまま購入することができます。

商品単価も高く、一度購入すると長期利用することになる商品は、ARの「試し置き機能」によりECでの売上を大幅に伸ばすことができるのではないでしょうか?

 

 

XR技術で働く人々をアシスト 『MR(複合現実)』

MRは「Mixed Reality(ミックスドリアリティ)」の略で、「複合現実」を意味します。

現実世界と仮想世界をミックスさせる技術で、VRやARの進化版と言われることもあります。現実の世界と仮想の世界を精緻に重ね合わせて、2つの世界があたかも1つになったかのような体験を提供します。専用HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やMRグラスを装着することで体験できます。センサーの働きにより映像に操作を加えることも可能で、複数のデバイスを使用して複数ユーザーが同じ体験を共有することができるのも特徴です。

現実世界と仮想世界を混在させるという意味では、MRはARによく似ていますが、ARは現実世界の比率が高く仮想世界はあくまでも「追加」されたものであるのに対し、MRは「現実世界と仮想世界の両方を取得し、重ね合わせる」ことに重点を置いているという違いがあります。

 

 

設計、施工から検査まで…XR技術の活用で工数短縮 「EQ House」引用:EQ House|竹中工務店 https://www.takenaka.co.jp/eq_house/

MRは主に建築業の世界で実用化が進んでいます。「現実と仮想をミックスさせる」ことで「設計が適切か」「目的を達成するためには何が必要か」を逆算できることがMRの強みかもしれません。

メルセデス・ベンツ日本竹中工務店のコラボレーションにより東京・六本木に出現した 「EQ House」 は、建設現場でMRゴーグルが使用され、1200枚のパネルを間違いや確認作業工数を短縮することが出来たようです。これは株式会社インフォマティックスが提供する「GyroEye Holo」を使用しており、HoloLensを通して建築現場や土木現場に1分の1サイズの図面を正確に映し出すことができます。この技術により、寸法確認や出来高の確認、現場作業員の施工支援、計測などが効率的に行なえるため、今後は紙図面なしの現場が実現されることが期待されています。

 

 

 


 

進化し続けるXRの世界

今までの私の認識では、VRはゲームの一種、ARは画面のキャラクターと写真を撮ることが出来る技術……と言った偏った知識しかありませんでしたが、今回XRについての様々な情報を収集したことで、小さい頃見たアニメの、憧れた未来に近づいている事を実感し驚きました。もしかすると割と近い未来には端末を必要とせずに、仮想空間が目の前に現れる時代が来るんじゃないか……なんて期待も膨らみますね!

また、今回紹介したもの以外にも「DR」という新しい技術も開発されています。これは「Diminished Reaity(ディミニッシュトリアリティ)」の略で「減損現実」と言って「消すAR」とも呼ばれ、VRやARは情報を増やす技術であるのに対し、DRは「実際に存在するものを現実世界から消して見えなくする」技術です。

このように、XR技術を使った市場は進化し続けています。「5G」による超高速通信網が本格的に普及することで飛躍的に拡がっていくのではないでしょうか?

 

“X”は未知のものを表すアルファベットでもあります。この未知数のポテンシャルが詰まっている「XR」の世界、引き続き動向を追い続けます!