近頃よく耳にするようになった「UX」という単語……でも普段使い慣れていない方にはなかなかピンときませんよね。

「UX」とはUser Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略称で、直訳すると「顧客体験」です。製品やサービスを通して、ユーザーが感じる「使いやすさや、感動、印象などの全ての体験」を指し、様々な場面における「サービスを介して体験を得ること」を意味します。日々の生活の中でもかなり広い対象となりますが、UXは “CS(カスタマーサティスファクション/顧客満足度)向上を促すための施策要素” として捉えると、その役割を具体的にイメージして頂けるかなと思います。

詳しくは過去のpearly daysでも特集しましたので、こちらも併せて参考にしてみてください。

NYで体感した、リアル店舗が取り組むべき「体験デザイン」の重要性

テクノロジーは顧客体験を変える! NY最新デジタル店舗4選

そんな「UX」についてもっと知るために、昨今のトレンドや話題に上がった新しいサービスはどんなものがあるのか?事例を見ながら傾向について追ってみましょう!

 


 

「UX世代」を知ることがUX攻略のカギ?

 

これからの「UX」において重要となるのは『顧客ターゲットの明確化=対象のユーザーにする理解と配慮』になってくると言われています。

そんな中生まれたのが「UX世代」なる言葉。主にミレニアル世代以降の若年層を中心に構成された、”何かを購入する際に「モノ」よりも「コト」、すなわち「体験」を重視する世代”の事をさし、 このUX世代は更に3つの世代に分類されます。

  • 現在の消費の主軸である ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)
  • 次の消費層をになうジェネレーション Z世代(1997年~2012年生まれ)
  • その先へ繋がるα世代(2013年~生まれ)

これらの世代に共通するのは『デジタルネイティブ』である点です。インターネットに馴染みがあるためオンラインショップでの買い物にも慣れており、SNSや口コミサイトを使った情報収集力も高い事が特徴です。

しかし、実はそれぞれの世代において消費行動は異なります。ミレニアル世代とジェネレーションZ世代においてはその価値観の違いも顕著で、各世代にあったアプローチが大切です。例えばミレニアル世代は「現実的」「コスト削減を重視」「信頼できるブランド・企業が好み」という特徴があるのに対し、ジェネレーションZ世代は「理想主義」「体験を重視」「透明性のある新しい価値観のブランド・企業を探す」といった特徴で、実はリアル店舗に足を運ぶのは、ミレニアル世代よりもZ世代のほうが少しだけ多いのかもしれません。

これからの消費の主軸はデジタルネイティブな「UX世代」へ……マーケティング対象の世代を知ること、世代を知ることは人を知ること、人を知り向きあうこと。それによってより深く消費者の購買行動へのアプローチが出来るはずです。

 

 

今話題のUX事例7選!

 

発見と体験ができる”売らない”店 「b8ta」

引用:fashion trend news 「買えないものも並ぶお店!? 売らない小売のパイオニア「b8ta Tokyo – Shibuya」をレポート」  https://ftnews.jp/_ct/17496504

「売らない」店舗=ショールーミングストアの「b8ta(ベータ)」は、このpearlydays内でも何度も登場していますが、今年2月にアメリカ国内の店舗が全店閉店し、日本法人b8ta Japanが独立(※1)したことで更に話題になっています。

(※1) 参考:日本ネット経済新聞「b8ta Japan、米国b8ta inc.から独立 全ライセンスを取得、国内店舗は継続」2022.02.28 https://netkeizai.com/articles/detail/5727

店舗=売り場はもう古い? リテールテイメントがキーワード NYの最旬体験型店舗4選

常に新しい商品が揃っているだけでなく、「商品を買う」前の「商品を知る・試す」という、まず商品に触れる一歩目の“新しい商品に出会う”ことを大切な体験として扱っています。 「買う?買わない?」「本当に必要?」…と、商品と消費者自身が向き合う時間になっているのではないでしょうか。購入を決めたとしても商品を自分で持ち歩きすることがないので、ハンズフリーに次の予定にもフラットに対応でき、アクティブな世代には嬉しい選択肢ですね!

引用:b8ta【新店舗出店決定】「b8ta Koshigaya Laketown」2022年2月18日 https://b8ta.jp/blogs/news/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9-%E6%96%B0%E5%BA%97%E8%88%97-b8ta-koshigaya-laketown-%E5%87%BA%E5%BA%97%E6%B1%BA%E5%AE%9A

また、イオンレイクタウンkazeへ出店するb8ta初の郊外型店舗「b8ta Koshigaya Laketown」のオープンも2022年4月27日と間近に迫っています。こちらは「4th Place」というコンセプトで、「フラッと立ち寄れる公園のような新たな地域交流の場」として、区画内にスターバックスがあったりライブキッチンが併設されていたりと、また新たな「体験価値」を提供する店舗になりそうで楽しみです!

 

“世代”に特化したプロダクト提案 「good eighty%」

引用:FASHIONSNAP.COM 「グッドエイティーパーセント」がデビュー ミレニアル世代がターゲット」2022年02月10日 15:01 JST https://www.fashionsnap.com/article/2022-02-10/good-eighty/

「good eighty%(グッドエイティーパーセント)」は、インテリアショップ「ACTUS(アクタス)」のミレニアル世代メンバーで立ち上げられたプロダクトチーム。同世代の新しい顧客層の創出を目的に、自身の実生活からのヒントや、ターゲット世代へのリサーチを経て、同世代の単身者や二人住まいに向けた家具やテキスタイルを商品開発しています。 コンセプトは「So far, So good-いまのところいい感じ-」とラフながら、天然由来の素材とミニマルなデザインで、次のライフステージでも用途や形を変えて使い続けられるアイテムを製作しています。

これは、自身が体験して質や価値を確かめる「顧客体験価値」を重視する傾向であり、商品やサービスにプラスの価値を求めるUX世代にマッチした提案だと思います。

 

 

UXが商品に! 「ルクア大阪 妄想ショップ」

引用:妄想ショップ|LICUA osaka https://www.lucua.jp/mousou_shop/

大阪駅直結のファッションビル「ルクア大阪」「妄想ショップ」は、Webサイトに設置された”ため息ポスト”に寄せられた小さな悩み(=ため息)をヒントに”妄想”し、新しいお店やサービスをつくるというユニークなプロジェクト。運営するのは、ルクア大阪でトキメキを企画・開発しているチーム「トキメキ事業部」です。

実際に現実となった妄想ショップは、

  • 甘いセリフを聴くだけのお店「イケボショップ」
  • ひたすら褒めてくれる「褒めるBar」
  • あなたのモヤモヤを聞いてくれる「お坊さん茶屋」
  • あなたのかわいいを探してくれる「キャッチコピー相談所」

……etc と、「わかる~!」「そんなん求めてた!」とついつい共感してしまう気になるショップ名ばかり。

料金も1回300円や500円のものが多く、ふらっと気軽に試せるリーズナブルな設定は積極的消費に繋がり、パーソナライズされた体験・サービスは今後多くのユーザーに喜ばれる存在になること間違いなし!

 

 

“無”の体験に価値を 「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE / Inner Beauty Charge」

引用:Ozmall 【体験レポ】カプセル内で瞑想!資生堂が手掛ける美のメディテーション体験「Inner Beauty Charge」2021/11/09 https://www.ozmall.co.jp/healthcare/article/28942/

コロナ禍を経てメディテーション(瞑想)が注目されています。資生堂のブランド「SHISEIDO」初の“美”に特化した旗艦店「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」では、不安やストレスから解放され、脳と心を休ませるリラックスの時間を持つことが大切という新感覚のメディテーション「インナー・ビューティー・チャージ(Inner Beauty Charge)」が体験できます。

「美しさは外面だけではなく内面から湧き出てくるもの」「心と体が常に健康で、それぞれ響き合っていきいきしている状態こそが、その人の本来の美しさ」……瞑想という、“無”を体験することで、その人の美しさを内面から引き出すためのアプローチをし、自分自身と向き合う時間が持てることに価値を感じ、消費へと繋がっています。

 

 

大切な洋服をアップデート 「FREAK’S STORE REPRO-PARK」

引用:FREAK’S STORE REPRO-PARK<リプロパーク> リペア&カスタムサービス https://www.freaksstore.com/news/2021/12/cp-repro-park.php

「フリークス ストア(FREAK’S STORE)」がリペア専門ブランド「リプロパーク(REPRO-PARK)」とタッグを組み、修理サービスを一部店舗に導入しました。これは、発送キットが入った専用のリペアトートバッグを購入し、バッグの中に修理したいアイテムを入れて発送すると、ソール交換などのリペアだけではなく、カスタムまで対応してくれるサービス。

大切な服は長く丁寧に着たい!お気に入りアイテムはダメージをちゃんとケアしたい!出番の少なくなってしまった服もカスタムによって新しく生まれ変われる!……こうした、今ある物を大事にしながら新たな価値を築くサービスは、ブランドではなく本質に価値基準を置いているジェネレーションZ世代にも共感され受け入れられるものだと思います。

 

 

“伝統”と”リニューアル”による新たな価値 「帝国ホテル東京 ホテルバル」

引用:Casa BRUTUS 「帝国ホテルのレストランがブルーの世界に一新!」January 8, 2022 https://casabrutus.com/design/216951

ヴィンテージスタイルとモダンなアプローチを組み合わせることで、懐かしいけどなんか新鮮なイメージになる「NEWヴィンテージ」が2022年の注目になっています。

その中でも特に注目なのが、インテリアデザイナーの森田恭通氏によって2021年11月にリニューアルされた帝国ホテルのレストラン「HOTEL BAR(ホテルバル)」。生まれ変わった店内は、すべてが青一色の幻想的な空間で、SHOGO SEKINE氏のアートペイントが一面に施され、老舗ホテルのクラシカルなディテールを残しつつ、懐かしくも新しい遊びのある空間となっています。

実際に訪れると、日本なのに海外のサロンにいるかのような非日常感。店内どのアングルをとっても絵になる、まさにアート中にいる没入感を味わえる空間です。 しかし帝国ホテルは2024年に建て替えが決まっているとのことで……こちらも3年間だけの特別となるプロジェクト。老舗のラストに対しての、なんとも粋なオーナーサイドの試みですね!

引用:帝国ホテル ホテルバル(和×洋スタイル) https://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/restaurant/tower_bars/ 

「伝統×アートペイント」と全てアナログな手法。UXといえばその言葉の響きからかデジタルと密接な関係にあるのでは?と思われる節もあるかもしれませんが、「UX」のベストが必ずしもデジタルを伴うことではないという良い事例です。 「UX」とは空間やサービスにおいてのクオリティや粋さなど、人の「感情」に働きかけるモノ・コトによって心が動かされ高揚し、体感によってユーザー自身がその価値を評価し自覚する事が大切なのだと再認識しました。

 

 

デジタルと融合した圧倒的没入感 「角川武蔵野ミュージアム」

引用:角川武蔵野ミュージアム「浮世絵劇場 from Paris」

“全身で浴びる浮世絵映像体験へ”とうたう、角川武蔵野ミュージアム「浮世絵劇場 from Paris」が話題に上がっています。 こちらは、「浮世絵」にテクノロジーとストーリーを掛け合わせされ、全く新しい巨大映像空間を創造。フランス国内で開催されたイベントが、360度体験型コンテンツとして凱旋帰国となりました。

また、「本棚劇場」としても注目される角川武蔵野ミュージアム。 約8mの巨大本棚に囲まれた圧倒的な図書空間ではプロジェクションマッピングも上映され、本の内容が表紙の外に飛び出してくるような感覚で、音と映像の新しい体験が味わえます。

引用:角川武蔵野ミュージアム https://kadcul.com/

 

 


 

時代の変化に合わせた情緒的UXを…

昨今の事例を見ると「UX」においてもデジタルの存在は大きく、その進化やもたらす効果と共に受け取り手の“新しさ”の感覚も変化していくのではと感じました。そして「体験」にとってその価値は、“新しさ”だけでない部分、人を惹きつける、心を動かす“魅力”となるものは、技術だけではないパーソナルへのメッセージや自己のと対面だったり、進化では追えない着眼点こそがキーとなってくるのではないでしょうか。

“何を” “誰に” “何のために”……目的が明確なカタチとなり、それが人に触れられることで、そこで感じられた「思い」が人をかえし、広がり、繋がっていく。

”自分のために” がまたその大切な ”誰かのために”……基本的なことだけれど、多様化する社会において個々の尊重とその「価値」の変化を知ることも大切です。

時代と共に個々の価値感が変化していくなかで、「体験」におけるの価値もどう変化していくのか? ”何が”人の心を動かすのか?今後の動向に注目しながら、空間演出においての「体験価値」を模索していきたいと思います。