2022年、新型コロナウィルス変異株の脅威に世界中が再び晒されており、withコロナというキーワードが本当にこの時代をよく表していると実感しています。

小売業界に空間分野で携わる私たちですが、この変化の激しい時代における大きなトレンドは【 DX・UX・SDGs 】の3つだと考えています。今回は、小売業界に目を向け、これからの変化や抑えるべきポイントを3つのテーマごとに紹介します。

 

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)
  • UX(ユーザーエクスペリエンス)
  • SDGs(エスディージーズ)

 


 

【DX】小売業界に押し寄せるDXの大きな波

コロナ禍以前からも激変をしてきた小売業界ですが、世界のトップ企業の展開に目を向けてみると、DXを契機とした弱肉強食の争いが刻々と繰り広げられています。

 

Amazon オンライン・オフラインから蓄積される購買データ

新型コロナウィルスの感染拡大の中でも、さらに成長を続けるAmazon。金融やクラウドサービスとしての存在感も絶大ですが、Amazonサイトの強力なプラットフォームによるEC販売とあわせ、Amazon Goによるリアル店舗展開も積極的です。Amazonは、モノが売れることによる売上拡大も図っていると思われますが、それよりも価値があるのは、買い物による購買行動データ。リアルとデジタルのデータを紐づけることで、より詳細な顧客の興味関心を解析できます。ビックデータを活用し、今後どのような展開をしていくのか、テクノロジー企業としてのAmazonの今後の動きに目が離せません。

 

アリババ 巨大な中国市場を席巻するリアル×オンライン戦略

2021年の独身の日(11月11日)には、取引総額が日本円でおよそ9兆6000億円に上ったと報告されています。Amazonとは違い、テナント出店を基本とするマーケットプレイス型のアリババ。BtoC、BtoB、海外EC、高級品専用ECなど主要なプラットフォームを持っています。特にブランド販売のBtoCサイトである”Tモール”は、特定顧客に対しPOP UPストアへ招待し、その模様をオンライン配信するなど、データに基づいたリアルxオンラインのエコシステムに余念がありません。

引用:日本ネット経済新聞 2021/11/18 〈中国「独身の日」〉 大手2社で流通額15.8兆円/アリババには29万ブランドが参加

 

ウォルマート 転換による苦境からの脱出

テクノロジー企業の猛撃によって、時代遅れだと揶揄されていたウォルマートですが、2016年のネット通販のJet.com買収を契機に、ネット販売を積極化。2021年1月期のEC売上は70%増という成長ぶり。

Walmart.com

また、つい先日の報道では、ウォルマートがメタバースへの準備のために独自仮想通貨発行の動きがあるとのこと。

参考:Bloomberg 2022年1月17日 3:54 JST 更新日時 2022年1月17日 6:25 JST「ウォルマート、独自の仮想通貨とNFT発行へ-メタバースへ準備」

 

 

facebookのMeta(メタ)への社名変更を皮切りに、昨年から声高に叫ばれている「メタバース」。メタバースとは、オンライン上に構築された3Dのバーチャル空間のこと。小売業界へもその波が押し寄せようとしています。

https://about.facebook.com/meta/

 

参考文献:「小売の未来」

 

 

【UX】リアルxデジタルの融合体験へのチャレンジは続く!

UX(ユーザーエクスペリエンス)はソフトウェアやWEBの業界から生まれた言葉ですが、「体験」価値は、業種を問わずすべての企業にとって考えなければならない要素です。 リアル店舗はブランド体験の重要な場所であり、カスタマージャーニーのすべての過程において、顧客にどのように体験してもらうかを設計していくことが必要です。また、デジタルを用いてより投入感のある演出やECと連動した仕掛けも、次々に新しい取り組みが実施されています。

 

CHOOSEBASE SHIBUYA 百貨店内に売らない店舗空間が出現

西武渋谷店パーキング館1階にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA」。DtoCブランドを中心に厳選された商品が展開されており、デジタルとリアルの融合体験により、相互を行き来する新しいショッピングを実現。

https://choosebase.jp/

引用:haconiwa 2021/10/04 「デジタルとリアルを融合した未来のショッピング空間。西武渋谷店パーキング館1階にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA」が気になる!」

 

 

メルカリステーション メルカリを体験できる期間限定ストア

フリマアプリのメルカリがマルイ内に期間限定店舗をオープン。メルカリをまだ使ったことがない人から、もっと楽しみたい方まで、アプリの使い方、撮影・梱包までメルカリサービスを体験できる空間です。

https://jp-news.mercari.com/more/station/

 

 

b8ta シリコンバレー発”売らない”店舗

シリコンバレー生まれの体験型店舗の代表格 b8ta(ベータ)がついに日本に上陸しました。大企業からスタートアップまで、見たことのないプロダクトが勢ぞろいで、新たな発見ができるショップです。出品者側が嬉しいのは、来店客データを詳細に取得・分析しフィードバックされるところ。商品への興味度などリアル店舗のデータ化ができるので、テストマーケティングに有効です。

 

 

Gatebox リアルなコミュニケーションを可能としたキャラクター召喚装置

少し変わり種のご紹介。キャラクターと一緒に暮らすために開発された、キャラクター召喚装置 Gatebox(ゲートボックス)。バーチャルなキャラクターとリアル空間でコミュニケーションを可能とした斬新なプロダクトです。

Gateboxとは?

 

 

【SDGs】サスティナブルは当たり前! しかし、その真価が問われる

昨年はメディアも含め、SDGsやサスティナブル、脱炭素社会という言葉を多く耳にしました。世界で取り組む課題として、関心の高まりはとても良い影響がある一方で、ウォッシュと言われる”見せかけ”のSDGsの活動もあるようです。

2022年も目標達成に向けてさらに関心が高まることが予想されますが、小売業界においては消費マインドへの影響もますます大きくなります。SDGsが当たり前となっていく今、各ブランドが打ち出していくサスティナブルの取り組みは、その本気度が求められます。

 

adidas SDGs新店舗「アディダス ブランドセンター 原宿」オープン

今年1月にオープンするアディダスの新店舗は、オールバーズとのコラボなど、約65%の商品が持続可能素材を使用しているとのこと。また、日本発のスニーカークリーニングもサービスとして提供。店内装飾やハンガーなどの備品にもサスティナブル素材が使用されており、まさにアディダスのSDGsを体感できるショップとなっています。

引用:アディダスが原宿にサステナビリティ“激推し”新店舗。脱炭素スニーカーに靴クリーニングも

 

 

スターバックス 「Greener Stores」日本1号店、皇居外苑 和田倉噴水公園店

より環境負荷の低い店舗のための国際認証「Greener Stores Framework(グリーナー ストア フレームワーク)」を取得した店舗で、カップを使って返すことができる「借りるカップ」の利用促進など、リユース体験を提供。家具は国産木材を使用し、店内装飾は廃材のアップサイクルによる照明やアートがディスプレイされています。また、店内には大きな手洗い用のシンクがあり、手洗水循環システムを設置したことにより、98%以上を循環利用しています。

引用:starbucks stories JAPAN , November 29, 2021 「より環境に配慮した店舗「Greener Stores」日本1号店、皇居外苑 和田倉噴水公園店で体験するサステナビリティ」

 

 

日本マクドナルド 50周年を迎え、SDGsの取り組みも積極化

大手小売スーパーがレジ袋の有料化や、食品チェーンがカトラリーの環境配慮素材採用を進めている中、ついにマクドナルドもサスティナブルな取り組みを積極化させているようです。紙製ストローなど今年2月に横浜市などの30店舖で先行導入。プラ製よりもコスト増となるが、無償提供を継続するとのこと。

引用:産経新聞 2021/12/22 15:32 「マックが紙製ストロー先行導入 来年2月から横浜で」

 

中国のマクドナルドでは、自転車によって自分でデバイスの充電ができる!とった面白い取り組みも。

引用:BUSINESS INSIDER Dec. 24, 2021, 10:30 AM「中国のマクドナルド、座席にエアロバイクを設置…食べながらスマホを充電することも可能」

 

 


 

DX・UX・SDGsが、withコロナ時代の「競争」を『共創』へと変えていく

小売店舗におけるDXやUXの流れは、待ったなしの状態で今後も進化を続けていきます。また、サスティナブルへの取り組みも多くの企業やブランドが参加し、差別化が難しくなることが予想されます。

競争が激化しそうな2022年、一方でキーワードは「共創」だと考えます。DX・UXは自社内だけで完結して取り組むのではなく、社会や業界が大きく転換できるかどうかが肝です。また、SDGsへの取り組みは、1社が勝ち残れば達成できるものではなく、足りない部分を補って、企業や個人が補完し合い、共に創り上げていく姿勢が求められます。

2022年も、私たちの”持続可能な社会”への挑戦は続きます。