全4回に渡ってお送りしている、ニューヨークレポート。第3回となる今回は最新スポット、ニューヨークのホテル4選。

1999年にシアトルに『Ace Hotel』が登場し、デザインスタジオ「ローマン・アンド・ウィリアムス・ビルディングス&インテリアズ(ROMAN AND WILLIAMS BUILDINGS & INTERIORS)」が提唱した『宿泊者だけでなく、地域に根付いたオープンマインドな感覚のホテル』という考え方は、 “個性豊かな人々が集う場所”として新たなコミュニティ創出の場となり、瞬く間にポートランド、ロンドン、そしてNYにも拡大。閉鎖的で宿泊者のためだけに存在していたホテルそのもののあり方を根底から変え、レストランやカフェは地域の人にも開かれ、今ではコワーキングスペースを併設するホテルも誕生し、常に話題性の高い最新スポットに。

その中でもNYで話題を集めている4件のホテルをレポート。Ace Hotel 同様、宿泊者だけでなく、仕事にもプライベートにも自由に集える”コミュニティ”が創出されている。


現代人が求めるものを追求 新世代ホテル【PUBLIC Hotel】

「荷物を運んでくれるドアマンやコンシエルジュなどが提供していたサービス」を”無駄なサービス”といい、現代人がどこに価値を置くかを形にした【PUBLIC Hotel】は、ブティックホテルの仕掛け人 イアン・シュレーガー(Ian Schrager) が手掛けた最新ホテル。

”現代人が本当に欲しがるものをあたえることがより良いサービスであり、現代にフィットするラグジュアリーである”と説く。つまり丁寧なお出迎えより、高速Wi-Fiの無料提供がラグジュアリーであると。

隠れ家の様なエントランスから期待感が高まる

「クリエイティブな現代人は仕事と遊びの境界があいまいで、よく遊ぶ人は仕事もできる。スムーズにネットにアクセスできないなんてありえない」と経営者は唱える。

トレンド商品やオリジナル商品を集めたインショップ

インテリアにも様々なアイデアが見られるが、コンシェルジェがいなくても導かれる様なエスカレーターの導線デザインは必見。

チェックインコーナー(2F)までの導線も洗練されている
チェックイン、チェックアウトはタブレットのみ

宿泊者以外もカジュアルに利用できる「コミュニティホテル」の最先端は、ホテルの定説を”無駄”と切り捨て、現代人が本当に欲しているサービスを提供することこそがラグジュアリーであるという概念に到達した。

自由に時間を過ごせるバー。現地情報ではどのホテルよりも落ち着くコミュニティ空間とのこと。

【 PUBLIC Hotel New York City 】
215 Chrystie St, New York, NY 10002

デザイン:ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)

大学寮をリノベーション【Freehand New York】

2018年1月、フラットアイアン地区に開業した【Freehand New York】。

大学寮のままを残した外観
フリクションを省いたチェックイン

Ace Hotel のデザイナーが設計。至るところに地元学生達のアートが飾られ、地域密着型を目指している。

至るところに飾られる地元学生のアート作品

ミレニアル世代をターゲットに、トレンディな仕事場、賑やかなソーシャライジングの場にもなる空間と、滞在する度に新しい体験をしたいという利用者のニーズを満たすために、5つのレストランやバーをホテル内に併設。

グリーンを配した過ごしやすいエアリーな空間

ミレニアル世代にとっては宿泊する部屋のアメニティよりも、ホテル内の飲食施設の充実度の方が重要視されている。

ライブラリーを改装したルーフトップバー

【Freehand New York】
23 Lexington Ave, New York, NY 10010

デザイン: ローマン・アンド・ウィリアムス・ビルディングス&インテリアズ(ROMAN AND WILLIAMS BUILDINGS & INTERIORS)

コンセプトはウェルネスと禅【Sister City】

2019年5月、ローワーイーストサイドに開業。 Ace Hotelグループが手がけた、ウェルネスをテーマにしたホテル【Sister City】。

シンメトリー性を高めた空間構成

Ace Hotel とは異なり、宿泊者やローカルが集まるラウンジエリアは設けず、 宿泊をメインとし、ニューヨークへ訪れた人たちがフットワーク軽く行動し、 ゆっくりと体を休められる施設を目指した。

他ホテルと同じくタブレットでのチェックインを取り入れている

PUBLIC Hotel でもあった様に、機能性と効率性を重視し、 無駄のない時代に合ったホテル。日本庭園をイメージしたガーデンや、 ミニマムなインテリア等日本的「禅」を感じさせるデザイン。

木ルーバーが日本らしさを強調

11階にある「Last Night」は地域に根付くことと、誰でもカジュアルに使用できることを目指したルーフトップバー。多くの人で賑わい、コミュニティが創出されている様子は、公式SNSでも見ることができる。

レストラン「フローレット(Floret)」は、ブルックリンの名レストラン「Battersby」シェフのジョゼフ・オグロッドネック氏がメニューを監修。

【Sister City】
225 Bowery, New York, NY 10002 

デザイン:アトリエ・エース(Atelier Ace)

ブルックリンで話題の社交場【The Williamsburg Hotel】

2018年開業の【The Williamsburg Hotel】。”ブルックリン地区はマンハッタンの延長線”という位置付けが、このホテルの誕生によってブルックリンを魅力的な場所として変貌させた。

宿泊者だけでなく多くの人で賑わうレストランフロア

インダストリアルなディテールを生かした内装(ブルックリンらしい)、ルーフトッププール、パンと新鮮野菜を看板にしたレストラン等も注目の的。

ホテルを超越した空間演出(JAZZ生演奏)

平日でも多くの人々が集い、コミュニティが生まれる、地元でも旅行者にも愛される場所。

【The Williamsburg Hotel】
96 Wythe Ave, Brooklyn, NY 11249

デザイン:ミカエリス・ボイド・スタジオ(Michaelis Boyd Studio)


トレンドのブティックホテルは、コミュニティ創出の新しいカタチ

NYに次々と開業していくホテルには「宿泊者だけでなく、地域に根付いたオープンマインドな感覚のホテル」という概念がしっかりと根付いており、日本にも少しづつ派生し始めている。

そして2020年春には、京都に日本初となるAce Hotel Kyotoが進出。 様々な人々が集うことで新しいコトに出会えるような期待感や刺激、インスピレーション。それらが重なり新たなコミュニティが創出される。

モノではないコト消費という時代性とも連動し、ホテルはより、その地域に暮らす・働く人にとって、なくてはならない場所へと進化していくのではないだろうか。